農地法許可について

Top / 農地法許可について


農地法許可について

農地について

わが国は国土が狭く、食料自給率も低いことから、海外からの輸入にその大部分を頼っています。農地は一度宅地等に転用されてしまうと、半永久的に農地でなくなってしまうことが多く、そのため限りある農地を守る趣旨で農地法をはじめとする諸法令で厳しく転用が規制されています。農地とは、「耕作の目的に供される土地」のことで、その土地が農地であるか否かはその土地のその土地の現況によって判断します。(現況主義)
登記記録で、農地以外の地目で記録されていても、現況が耕作している農地である場合は許可や届出が必要になります。その逆に、登記記録上、地目は農地であるが、現況は宅地であるというような場合は、許可が必要ではないということにはなりません。
本来、転用許可を取ってから、転用に着手すべきですが、この場合、無許可で転用されたことも考えられます。無許可転用の場合、始末書等を添付するなどして、事後的に転用許可を取得すればよいこともありますが、悪質な場合、原状回復・罰則等の厳しい措置がとられることもあるので注意が必要です。


その農地法は平成21年12月15日に改正法が施行されました。

旧農地法第1条(目的)
「この法律は、農地はその耕作者みずからが所有することを最も適当であると認めて、耕作者の農地の取得を促進し、及びその権利を保護し、並びに土地の農業上の効率的な利用を図るためその利用関係を調整し、もつて耕作者の地位の安定と農業生産力の増進とを図ることを目的とする。」

改正農地法第1条(目的)
「この法律は、国内の農業生産の基盤である農地が現在及び将来における国民のための限られた資源であり、かつ、地域における貴重な資源であることにかんがみ、耕作者自らによる農地の所有が果たしてきている重要な役割も踏まえつつ、農地を農地以外のものにすることを規制するとともに、農地を効率的に利用する耕作者による地域との調和に配慮した農地についての権利の取得を促進し、及び農地の利用関係を調整し、並びに農地の農業上の利用を確保するための措置を講ずることにより、耕作者の地位の安定と国内の農業生産の増大を図り、もつて国民に対する食料の安定供給の確保に資することを目的とする。」

改正農地法の目的は、「農地の効率的な利用」 「優良農地の確保」 「権利の取得」であり、国民に対する食料の安定供給の確保(自給率アップ)をめざし、農地につき権利を有する者は、適正かつ効率的な利用を確保するようにしなければならないと定められています。
改正農地法によって、転用規制がより強化・拡大され、反面、農地の賃借権に係る権利移動の規制に関しては緩和されています。(所有権の権利移転は旧来どおり)
※(緩和の例)「個人の参入をしやすくするために取得下限面積を自由化」、「農業生産法人などが農地を賃借するのを容易にした」など

「自分の土地をどうしようが勝手だろう」と思われる方もいるかもしれませんが、農地は非常に厳しい規制がかけられており、土地の権利者といえども自由に土地を転用したり譲渡したりできるわけではないということ認識してください。



農地法3条許可

農地法第3条の許可とは、耕作目的で農地または採草放牧地(以下「農地等」という)の所有権を移転し、又は地上権永小作権質権使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利設定し、若しくは移転する場合に、必要となる許可です。相続時効取得の場合などは、第3条の許可は不要となります。(届出は必要。)

農地法第4条、第5条の許可のような市街化区域内の特則はありませんので、市街化区域内の農地でも許可申請が必要となります。農地法第3条の許可を得ないで農地等を売買しても、農地法の許可は「効力要件(許可が無ければ契約等の効力が生ぜず無効)」なので所有権移転や利用権設定の登記申請には、農地法許可書等の添付が必要であり、許可を得ないで登記申請できないようになっています。(添付しないで登記申請することも不可能ではありませんが、許可権者に法務局から許可の有無を照会しますので、許可が無ければ移転登記等は完了しません。)
農地等の売買をする場合は、決済日までに許可を得て、決済後速やかに登記申請できるようにしておかなければならないということです。(仮登記の場合は除きます。)
また、農地法第3条の許可に違反した場合、3年以下の懲役または300万円以下(法人の場合は1億円以下)の罰金に処せられます。
許可申請書の提出窓口は各市町村の農業委員会事務局となっています。

農地法3条許可を得て農地の買受人(又は借受人)になるには一定の要件(例:買受人の農家要件など)を満たす必要があり、一般的に、買受人の要件を満たすかどうかは、現在耕作している農地面積や、農機具の保有状況、買受人の年齢・農業の経験などが考慮されます。
これは、農地法3条許可が買受人となろうする者が、農業を担うことができず農地が荒廃してしまうのを防ぐ趣旨で規定されているからです。農地法3条許可の要件は、市町村によって違うことがあるので、申請の前に管轄する農業委員会事務局で確認する必要があります。



農地法3条の届出

農地法3条の届出とは、農地を相続時効等で取得した場合に届け出るものをいいます。市街化区域、市街化調整区域を問わず、相続や時効取得の場合は許可申請は必要ではありませんが、取得した後(相続等による所有権移転登記後)に、届出をすることになっています。
届出書の作成自体は容易ですが、3条許可や5条許可のように、譲渡する場合の効力要件ではなく権利移転の手続きと連動していませんので、つい届出することを失念してしまいがちです。ご注意ください。



農地転用 -4条・5条許可・届出-

農地転用とは、農地を農地以外のものにすることをいいます。たとえ自分所有の土地であっても、農地は自由に転用することはできません。
転用する農地面積が4ha(4000㎡)以下の場合は、都道府県知事の許可ですが、面積が4ha(4000㎡)を超えるような場合は、農林水産大臣の許可が必要となり、2haを超え4ha以下の農地を転用する場合は、都道府県知事の許可ですが、都道府県知事が許可しようとする場合には、予め農林水産大臣に協議することとされています。

転用する農地面積 許可権者
4ha以下 都道府県知事の許可
4haを超える 農林水産大臣の許可
2haを超え4ha以下 都道府県知事の許可
農林水産大臣との協議を要する

許可申請をせずに転用してしまうと、売買など農地の権利移転(第5条許可)の場合、許可が効力要件になっているので契約の効力が生じず無効となり、所有権移転等の登記申請もできません。(仮登記の場合は除く)違反転用には原状回復命令や罰則もありますので注意が必要です。
一時的な転用(例:農地近くで工事を請け負った場合に、工事終了まで一時的に農地を資材置場、重機の保管場所にする等)でも許可をとる必要があります。一時転用ですから、転用の必要がなくなったら、農地に回復する必要があります。
農地転用の許可は、広大な農地の一部を転用する場合にも必要です。当職が以前勤めていた事務所でのことですが、2000㎡程の農地の端を5m四方ほど埋め立て、建設資材のブロックを置いていて農業委員会から指導を受けたという事案や、畑の端に埋め立てなどせずに庭石(大き目の石)を数個置いていても、違反として指導を受けたという事案もあります。
また、大きな農地の一部を転用して移転登記をするような場合は、土地の分筆登記をする必要があります。
さらに、農地を転用する場合、それに伴い、他の法令の許可等の添付を必要とする場合があります。

そのような場合、他の法令による許認可等の「見込み」がないと許可が得られない、又は申請自体が受け付けてもらえない場合がありますので、先行、または同時に担当部署等に申請する必要があります。(農振除外、開発許可など)

お客様ご自身で許可を取ることも不可能ではありませんが、煩わしい手続きに頭を悩ませるよりも、専門家を利用することをお勧めします。



農地法4条許可

自己の所有する農地を自己の用いる農地以外の地目への転用の場合、農地法第4条許可の申請が必要となります。具体的には、以下のような場合です。

  • 自分の所有する農地に自己所有の住宅を建てる
  • 自分の所有する農地を自分の個人事業の用に利用する
    など

注意すべきは、自己所有の農地に、身内(子、孫など)の所有する住宅を建てる場合や、自己所有の農地に自分が経営する法人の事業の用に利用するような場合は、土地所有者と利用する者が異なりますので、農地法5条許可になります。



農地法5条許可

権利の移転を伴う、農地の農地以外の地目への転用の場合農地法第5条許可の申請が必要となります。具体的には、以下のような場合です。

  • 農地を売買贈与により取得し転用する場合
  • 農地に地上権賃借権使用貸借権通行地役権を設定して転用する場合
  • 農地に設定された地上権賃借権等の権利移転を受けて転用する場合



農地法4条・5条届出

都市計画法が指定する市街化区域内の農地の転用については、特則により農業委員会への「届出」をすればよいことになっています。

農地転用届出の区分は転用許可の準じ以下のとおりです。

  • 自己の農地を農地以外のものに転用する場合 ⇒ 農地法4条届出
  • 権利の移転を伴う農地転用の場合 ⇒ 農地法5条届出

「市街化区域」と「市街化調製区域」

  • 市街化区域とは、都市計画法に基づき指定された、すでに市街地を形成している区域、及び、概ね10年以内に優先的、計画的に市街化を図るべき区域をいいます。都市計画区域のうち、既に市街地になっている区域や公共施設を整備するなど積極的に市街地を作っていく区域。
  • 市街化調製区域とは、市街化を抑制すべき区域をいいます。
    市街化調製区域では、開発行為は原則として抑制され、都市施設の整備も原則として行われません。原則、新たに建築物を建てたり、増築することが出来ませんが、一定規模までの農林水産業施設や、公的な施設、および公的機関による土地区画整理事業などによる整備等は可能な場合があります。既存建築物を除いては、全般的に農林水産業などの田園地帯とすることが企図されています。

「許可」と「届出」

  • 許可とは、行政法学上、法令に基づき一般的に禁止されている行為について、特定の場合又は相手方に限ってその禁止を解除するという法律効果を有する行政行為をいいます。農地法第4条許可は、ここでいう許可にあたります。農地法第3条許可は、法令上は許可と表記されますが、厳密に言えば、行政法学上「認可」にあたり、農地法第5条許可は転用に関しては「許可」、権利移転に関しては「認可」ということになります。
  • 「認可」とは、行政法学においては、行政行為のうち私人の契約、合同行為を補充して法律行為の効力要件とするものをいいます。
  • 届出とは、ある行為を行うに当たって、監督官庁に事前通知する義務を課した制度をいいます。届出が形式上の要件に適合している場合は、当該届出が法令により当該届出の提出先とされている機関の事務所に到達したときに、当該届出をすべき手続上の義務が履行されたものとされています。




農地 Contents