相続人の範囲の確定

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相続人の範囲の確定



相続人の範囲を調査するには、被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍、原戸籍、現在戸籍等)を集め、配偶者、親、子、兄弟姉妹等身分関係を明らかにして相続権があるのは誰なのかを確定します。非嫡出子(認知した婚外子)がいる場合や、再婚して前妻、後妻それぞれに子がいる場合など、遺産分割協議にはその非嫡出子、前妻の子の存在を知らずにその者を除いて遺産分割協議をしても、有効な遺産分割協議とはいえません。そもそも、不動産の相続登記申請などは相続を証する情報として戸籍等の一式が揃っていなければ手続進みませんので、戸籍をもれなく調べて相続人の範囲を確定しなければ相続手続は始まらないといってもいいでしょう。

非嫡出子とは、婚姻関係にない男女の間に生まれた子のことをいいます。認知されていれば相続権があります。認知されていなければ、生物学的には親子でも法律的には親子関係を証明できないので相続人とはなりません。相続開始時には認知されていない非嫡出子が相続開始後に認知の訴えにより法的にも子となることもあります。法律上の婚姻関係の男女の間に生まれた子(嫡出子)と同順位で相続でき、相続分も同じです。
※ 最高裁判所は、民法900条4の「嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし」という部分が「法の下の平等」(憲法14条)に違反するとの判断を示しました。この判決を受けて、民法が改正され嫡出子と非嫡出子の相続分は同じになりました。

転籍(本籍地を移すこと)がある場合は、一箇所の役所ではすべての戸籍類を集めることができない場合もあります。行政書士等の士業者は依頼を受けて職権で戸籍等を取得し相続人調査をすることができますが、一般の方々は窓口で被相続人との関係を証明できるもの(戸籍など)の提示を求められることがあります。また、本人確認できるもの(免許証など)も持参しなければなりません。

相続人の範囲、順位

相続人の範囲は、民法で画一的に定められています。相続人は2つの系列がありますが、一つは被相続人の配偶者(婚姻関係)であることによって相続権が認められる配偶者相続で、もう一つは被相続人と血族関係があることによって相続権が認められる血族相続です。血族相続人の順位は、以下のとおりで、配偶者とともに相続人となります。

  1. 配偶者は常に第一順位
  2. 子及びその代襲相続人である直系卑属
  3. 直系尊属(親等の近い者優先)
  4. 兄弟姉妹及びその代襲相続人であるその兄弟姉妹の子

法定相続分

【直系卑属】
卑属と呼ばれる子、孫、おい、めいのように自分から下の世代にある人たちのうち、子・孫らの直系の関係にある卑属のこと。

【直系尊属】
尊属と呼ばれる自分や配偶者の祖先など先の世代にある人たちのうち、父母・祖父母らの直系の関係にある尊属のこと。




【相続関係図】
被相続人を「甲」とする相続関係図
関係図



配偶者
配偶者は常に相続人であり、血族相続人がいるときは、その者と同順位で相続人となります。


血族相続人の第1順位は、です。子は、実子であるか養子であるかを問わず、また嫡出子であるか非嫡出子であるかを問いません。ただし、非嫡出子は認知されていることが必要。胎児は、既に生まれたものとみなされるので相続人となります。左図でいえば、A、B、C、D

直系尊属
第1順位の相続人である配偶者と子がいない場合、又はその全員が相続の放棄をしたとき、又は相続資格を喪失したとき(欠格事由に該当または廃除)は、第2順位の被相続人の直系尊属が相続人となります。左図でいえば、A、B、C、D、孫の全員が相続放棄、被相続人甲より先に死亡しているとき、相続欠格事由に該当したときは、甲の父と母が相続人となります。直系尊属であれば、実父母養父母を問いません。実父母と養父母がいる場合はすべての父母が相続人となります。直系尊属では、親等の異なる者の間では、被相続人に親等が近いものが優先されます。

兄弟姉妹
第1順位、第2順位の相続人がいない場合、又はその全員が相続放棄、相続欠格事由に該当する場合は第3順位の被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。


相続人不存在

相続人がまったくいない場合は、審判で特別縁故者への財産分与がなされたものを除き、相続財産は国庫に帰属します。

代襲相続

代襲相続とは、相続開始以前に、相続人となるべき者(推定相続人)が死亡その他の事由で相続権を失った場合に、その者の直系卑属がその者に代わって同一順位で相続人となることを言います。上記の図でいえば、被相続人甲の死亡以前に、子Cが死亡、相続欠格事由該当、相続人廃除の場合に、Cの子(孫)が代わって相続するということです。この場合、Cを被代襲者、孫を代襲相続人といいます。Cが相続放棄した場合は、Cは初めから相続人でなかったことになり、孫は代襲相続人になりませんので、注意が必要です。
また、被相続人が死亡し、直系卑属、直系尊属がなく、兄弟姉妹が相続人となるような場合で、その兄弟姉妹が被相続人より先に亡くなっていた場合、その兄弟姉妹の子は代襲相続できますが、その兄弟姉妹の子の子は代襲相続できません。

相続欠格

相続欠格制度は、相続人となるべき者が、一定の重大な違法行為をしたために、この者を相続人とすることが一般の法感情に反する場合に、法律上当然に相続資格を奪う制度です。民法891条に、相続欠格事由として5つのものが挙げられています。これらに該当する者は、なんら手続を経ることなく、当然に相続人となることはできません。

【第891条(相続人の欠格事由)】
次に掲げる者は、相続人となることができない。

  1. 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
  2. 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。
    ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
  3. 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
  4. 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
  5. 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者


相続人の廃除

相続人の廃除の制度は、遺留分を有する推定相続人が被相続人に対して虐待をし、もしくは被相続人に重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときに、被相続人の意思によって遺留分を有する推定相続人の相続権を奪う制度です。
相続人の廃除の対象は、「遺留分を有する推定相続人」のみで、すべての相続人が対象である相続欠格とは異なります。また、相続欠格は、なんら手続を経ることなく相続資格を失いますが、廃除の場合は一定の手続を経ない限り相続権を失いません。

廃除の手続
【生前廃除】
被相続人が、家庭裁判所に廃除の請求をし、廃除の調停の成立または審判の確定により、被廃除者は相続権を失います。

【遺言廃除】
遺言廃除の場合は、遺言執行者が遺言の効力が生じた後に遅滞なく家庭裁判所に廃除の請求をし、廃除の調停又は審判が確定すれば、被廃除者は被相続人の死亡の時にさかのぼって相続権を失います。

推定相続人廃除の調停が成立したときまたは審判が確定したときは、申立人は(被相続人)その旨の戸籍の届出をしなければなりません。また、この推定相続人廃除は取消すこともできます。



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