契約書に貼付する印紙

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契約書に貼付する印紙


課税文書に該当するかどうかの判断

印紙税が課税されるのは、印紙税法で定められた課税文書に限られています。この課税文書とは、次の三つのすべてに当てはまる文書をいいます。

  1. 印紙税額一覧表第一(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証明されるべき事項(課税事項)が記載されていること。
  2. 当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること。
  3. 印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書でないこと。

課税文書に該当するかどうかはその文書に記載されている内容に基づいて判断することとなりますが、当事者の約束や慣習により文書の名称や文言は種々の意味に用いられています。そのため、その文書の内容判断に当たっては、その名称、呼称や記載されている文言により形式的に行うのではなく、その文書に記載されている文言、符号等の実質的な意味を汲み取って行う必要があります。

例えば、文書に取引金額そのものの記載はないが、文書に記載されている単価、数量、記号等により、当事者間において取引金額が計算できる場合は、それを記載金額とし、また、売掛金の請求書に「済」や「了」と表示してあり、その「済」や「了」の表示が売掛金を領収したことの当事者間の了解事項であれば、その文書は、売上代金の受領書(第17号の1文書)に該当することになります。

印紙税は契約書に記載された内容により取扱いが異なりますので注意が必要です。

印紙税一覧表

不動産の譲渡・消費貸借等に関する契約書

不動産の売買契約書、消費貸借契約書は、印紙税額一覧表第1号文書(下記一覧表の番号1)に該当します。第1号文書に該当する文書としては、次の4種類のものがあります。

  1. 不動産、鉱業権、無体財産権、船舶、航空機及び営業の譲渡に関する契約書
    具体的には、不動産売買契約書、土地建物売買契約書、不動産交換契約書、不動産売渡証書などです。
  2. 地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書
    具体的には、土地賃貸借契約書、土地賃料変更契約書などです。
  3. 消費貸借に関する契約書
    具体的には、金銭借用証書、金銭消費貸借契約書などです。
  4. 運送に関する契約書
    具体的には、運送契約書、貨物運送引受書、用船契約書などです。
    なお、運送に関する契約書には、乗車券、乗船券、航空券及び運送状は含まれません。
    なお、不動産の譲渡に関する契約書のうち記載された契約金額が1,000万円を超えるもので、平成9年4月1日から平成25年3月31日までの間に作成するものの税額については、軽減の措置があります。

請負に関する契約書

請負についての契約書は、印紙税額一覧表第2号文書(下記一覧表の番号2)「請負に関する契約書」に該当します。
請負とは当事者の一方(請負人)がある仕事の完成を約し、相手方(注文者)がこれに報酬を支払うことを約束することによって成立する契約をいいます。請負には建設工事のように有形的なもののほか、警備、機械保守、清掃などの役務の提供のように無形的な結果を目的とするものも含まれます。具体的には、工事請負契約書、工事注文請書、物品加工注文請書、広告契約書、会計監査契約書などが請負に関する契約書に該当します。また、プロ野球選手や映画俳優などの専属契約書も請負に関する契約書に含まれます。なお、請負に関する契約書に該当するものであっても、営業者間において継続する複数の取引の基本的な取引条件を定めるものは、第7号文書「継続的取引の基本となる契約書」に該当することがあります。建設工事の請負契約書のうち記載された契約金額が1,000万円を超えるもので、平成9年4月1日から平成25年3月31日までの間に作成するものの税額については、軽減の措置があります。

継続的取引の基本となる契約書

印紙税額一覧表第7号文書(下記一覧表の番号7)の「継続的取引の基本となる契約書」とは、特定の相手方との間において継続的に生じる取引の基本となる契約書のうち次の文書をいい、税率は1通につき4,000円です。
ただし、その契約書に記載された契約期間が3ヶ月以内であり、かつ、更新の定めのないものは除かれます。

なお、継続的取引の基本となる契約書に該当しないものであっても、その記載されている内容によって、例えば、運送に関する契約書(第1号の4文書)や請負に関する契約書(第2号文書)に該当することがありますので注意ガ必要です。

  1. 売買取引基本契約書や貨物運送基本契約書、下請基本契約書などのように、営業者間において、売買、売買の委託、運送、運送取扱い又は請負に関する複数取引を継続的に行うため、その取引に共通する基本的な取引条件のうち、目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格のうち1以上の事項を定める契約書
  2. 代理店契約書などのように、両当事者(営業者に限らない)間において、売買に関する業務、金融機関の業務、保険募集の業務又は株式の発行若しくは名義書換の事務を継続して委託するため、その委託する業務又は事務の範囲又は対価の支払方法を定める契約書
  3. その他、金融、証券・商品取引、保険に関する基本契約のうち、一定のもの
    (例) 銀行取引約定書、信用取引口座約定約諾書、保険特約書など

金銭又は有価証券の受取書、領収書

金銭又は有価証券の受取書や領収書は、印紙税額一覧表第17号文書(下記一覧表の番号17)「金銭又は有価証券の受取書」に該当し、印紙税が課税されます。受取書とはその受領事実を証明するために作成し、その支払者に交付する証拠証書をいいます。
したがって、「受取書」「領収証」「レシート」「預り書」はもちろんのこと、受取事実を証明するために請求書や納品書などに「代済」、「相済」とか「了」などと記入したものや、お買上票などでその作成の目的が金銭又は有価証券の受取事実を証明するものであるときは、金銭又は有価証券の受取書に該当します。
金銭又は有価証券の受取書は、受け取る金銭又は有価証券が売上代金に係るものかそれ以外のものかで税額が異なります。
売上代金とは、資産を譲渡し若しくは使用させること(その資産に係る権利を設定することの対価を含みます。)又は役務を提供することによる対価(手付けを含みます。)、すなわち何らかの給付に対する反対給付であることをいいます。
したがって、借入金、担保としての保証金、保険金や損害賠償金などは売上代金に該当しません。

なお、営業に関しない金銭又は有価証券の受取書は、非課税となっています。ここでいう営業とは、一般通念による営業をいい、おおむね営利を目的として同種の行為を反復継続して行うことをいいます。
したがって、株式会社などの営利法人や個人である商人の行為は営業になりますが、公益法人や商人以外の個人の行為は営業には当たりません。

税額は、売上代金に係る受取書と、売上代金以外の受取書の区分によって、異なります。

建物の賃貸借契約書

建物の賃貸借契約書には、印紙税はかかりません。ところで、建物の賃貸借契約書の中には、その建物の所在地や使用収益の範囲を確定するために、敷地の面積が記載されることがありますが、このような文書も建物の賃貸借契約書であるとして印紙税はかかりません。
しかしながら、その敷地についての賃貸借契約を結んだことが明らかであるものは、印紙税額の一覧表の第1号の2文書「土地の賃借権の設定に関する契約書」に該当することになります。
また、貸しビル業者などが、ビルなどの賃貸借契約又はその予約契約を締結する際などに、そのビルなどの賃借人から建設協力金又は保証金などの名目で一定の金銭を受け取り、そのビルなどの賃貸借期間に関係なく一定期間据置き後、割賦償還することなどを約する場合がありますが、このような建設協力金又は保証金などの取り決めのある建物の賃貸借契約書は印紙税額一覧表第1号の3文書「消費貸借に関する契約書」に該当しますのでご注意ください。

駐車場を借りたときの契約書

土地又は地上権の賃貸借契約書は、印紙税額一覧表の第1号の2文書に該当し、印紙税がかかりますが、建物や施設、物品などの賃貸借契約書は印紙税がかかりません。
したがって、駐車場の賃貸借契約書の場合は、その内容が土地の賃貸借であるのか、あるいは駐車場という施設を賃貸借するものであるのかによって、印紙税の取扱いが異なってきます。
駐車場を借りるための契約の形態には、おおむね次のようなものが考えられますが、印紙税はその形態により次のような取扱いになります。

  •  駐車する場所としての土地を賃貸借する場合
    駐車する場所として、いわゆる駐車場としての設備のない更地を賃貸借する場合の賃貸借契約書は、印紙税額一覧表第1号の2文書「土地の賃借権の設定に関する契約書」に該当し、印紙税がかかります。
  •  車庫を賃貸借する場合
    車庫という施設の賃貸借契約書ですから、印紙税はかかりません。
  •  駐車場の一定の場所に駐車することの契約の場合
    駐車場という施設の賃貸借契約書ですから、印紙税はかかりません。
  •  車の寄託(保管)契約の場合
    この契約書は、車という物品を預かる寄託契約書ですから、印紙税はかかりません。

契約書の意義

課税物件表には、第1号の不動産の譲渡に関する契約書、消費貸借に関する契約書、第2号の請負に関する契約書、第14号の金銭又は有価証券の寄託に関する契約書などのように「○○に関する契約書」という名称で掲げられているものが多くありますが、ここにいう契約書は、一般的に言われるものよりかなり範囲が広く、そのため、印法通則5にその定義規定を置いています。
すなわち、課税物件表に掲げられているこれらの契約書とは、契約証書、協定書、約定書その他名称のいかんを問わず、契約(その予約を含みます。以下同じ。)の成立若しくは更改又は契約の内容の変更若しくは補充の事実(以下「契約の成立等」といいます。)を証すべき文書をいい、念書、請書その他契約の当事者の一方のみが作成する文書又は契約の当事者の全部若しくは一部の署名を欠く文書で、当事者間の了解又は商慣習に基づき契約の成立等を証することになっているものも含まれます。
したがって、通常、契約の申込みの事実を証明する目的で作成される申込書、注文書、依頼書などと表示された文書であっても、実質的にみて、その文書によって契約の成立等が証明されるものは、契約書に該当することになります。
契約とは、互いに対立する2個以上の意思表示の合致、すなわち一方の申込みと他方の承諾によって成立する法律行為ですから、契約書とは、その2個以上の意思表示の合致の事実を証明する目的で作成される文書をいうことになります。

申込書、注文書、依頼書等と表示された文書の取扱い

契約とは、申込みとその申込みに対する承諾によって成立するものですから、契約の申込み事実を証明する目的で作成される単なる申込書、注文書、依頼書等(以下「申込書等」という。)は、通常、課税対象にはなりません。
しかし、たとえ、申込書等と表示された文書であっても、その記載内容によっては、契約の成立等を証する文書、すなわち、契約書になるものがあります。
契約の成立等を証する文書かどうかは、文書の記載文言等その文書上から客観的に判断するというのが印紙税の基本的な取扱いですから、申込書等と表示された文書が契約の成立等を証明する目的で作成されたものであるかどうかの判断も、基本的にその文書上から行うことになります。
このような契約の成立等を証明する目的で作成される文書は当然に契約書に該当するのですが、実務上、申込書等と表示された文書が契約書に該当するかどうかの判断はなかなか困難なことから、次に掲げるものは、一般的に契約書に該当するものとして取り扱われています。

  1. 契約当事者の間の基本契約書、規約又は約款等に基づく申込みであることが記載されていて、一方の申込みにより自動的に契約が成立することとなっている場合における当該申込書等。ただし、契約の相手方当事者が別に請書等契約の成立を証明する文書を作成することが記載されているものは除かれます。
  2. 見積書その他の契約の相手方当事者の作成した文書等に基づく申込みであることが記載されている当該申込書等。ただし、契約の相手方当事者が別に請書等契約の成立を証明する文書を作成することが記載されているものは除かれます。
  3. 契約当事者双方の署名又は押印があるもの

契約書の写し、副本、謄本等

契約書は、契約の当事者がそれぞれ相手方当事者などに対して成立した契約の内容を証明するために作られますから、各契約当事者が1通ずつ所持するのが一般的です。この場合、契約当事者の一方が所持するものに正本又は原本と表示し、他方が所持するものに写し、副本、謄本などと表示することがあります。しかし、写し、副本、謄本などと表示された文書であっても、おおむね次のような形態のものは、契約の成立を証明する目的で作成されたことが文書上明らかですから、印紙税の課税対象になります。

  1. 契約当事者の双方又は文書の所持者以外の一方の署名又は押印があるもの
  2. 正本などと相違ないこと、又は写し、副本、謄本等であることなどの契約当事者の証明のあるもの
    なお、所持する文書に自分だけの印鑑を押したものは、契約の相手方当事者に対して証明の用をなさないものですから、課税対象とはなりません。
    また、契約書の正本を複写機でコピーしただけのもので、上記のような署名若しくは押印又は証明のないものは、単なる写しにすぎませんから、課税対象とはなりません。
    このように、印紙税は、契約の成立を証明する目的で作成された文書を課税対象とするものですから、一つの契約について2通以上の文書が作成された場合であっても、その全部の文書がそれぞれ契約の成立を証明する目的で作成されたものであれば、すべて印紙税の課税対象となります。

文書の記載金額

印紙税の課税文書には、記載金額により税額が異なるもの又は課税されないものがあります。この記載金額とは次の金額をいいます。

  •  不動産などの譲渡に関する契約書及び債権の譲渡契約書
     売買→売買金額
    例えば、時価600万円の土地を500万円で売買すると記載した場合の記載金額は500万円です。
     交換→交換金額
    なお、双方の金額が記載してある場合には高い方(等価交換のときは、いずれか一方)の金額が、交換差金のみが記載してある場合にはその交換差金がそれぞれ記載金額となります。
    例えば、価額1,000万円の土地と価額1,100万円の土地を交換し、交換差金100万円を支払うと記載した場合の記載金額は1,100万円です。
     代物弁済→代物弁済により消滅する債務の金額
    なお、代物弁済の目的物の価額が消滅する債務の金額を上回ることにより、債権者がその差額を債務者に支払うこととしている場合には、その差額を加えた金額となります。
    例えば、債務者が借用金1,000万円の支払いに代えて1,500万円相当の土地を引渡し、債権者は債務者に500万円を支払うと記載した場合の記載金額は1,500万円です。
     法人などに対する現物出資→出資金額
     その他→譲渡の対価たる金額

(注)贈与契約においては、譲渡の対価たる金額はありませんから、契約金額はないものとして取り扱われます。

  •  土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書→設定又は譲渡の対価たる金額
    設定又は譲渡の対価たる金額とは、権利金その他名称を問わず後日返還されないものをいいます。なお、賃貸料は記載金額に入りません。
  •  消費貸借に関する契約書→消費貸借金額
    なお、利息金額は含まれません。
  •  運送に関する契約書→運送料又は用船料
  •  請負に関する契約書→請負金額
  •  債務引受けに関する契約書→引き受ける債務の金額
  •  記載金額が外国通貨により表示されている契約書
    その文書を作成した日の基準外国為替相場又は裁定外国為替相場により本邦通貨に換算した金額が、その文書の記載金額となります。

※ 基準外国為替相場及び裁定外国為替相場は、日本銀行ウェブサイトで公表されています。

  •  予定金額等が記載されている契約書
    イ 記載された契約金額等が予定金額又は概算金額 → 予定金額又は概算金額
    ロ 記載された契約金額等が最低金額又は最高金額 → 最低金額又は最高金額
  •  契約の一部についての契約金額のみが記載されている契約書
    記載されている一部の金額が記載金額となります。
    ただし、契約書に記載された金額であっても、手付金額や内入金額は記載金額に該当しません。
  •  月単位などで契約金額を定めている契約書
    月単位などで定めている契約書で、契約期間の記載があるものは、その金額に契約期間の月数などを乗じて計算した金額が記載金額となります。
    契約期間の記載がないものは、契約金額の計算ができませんから、記載金額はないものとされます。
    なお、契約期間の更新の定めがあるものについては、更新前の期間のみで計算することになります。
  •  単価、数量などにより契約金額等が計算できる契約書等
    その文書に記載されている単価及び数量、記号その他により契約金額等を計算できる場合は、その計算により算出した金額が記載金額となります。
  •  消費税及び地方消費税の金額が区分記載されている契約書や領収書
    消費税及び地方消費税(以下「消費税額等」といいます。)が区分記載されている場合又は税込価格と税抜価格の両方が記載されていること等により、その取引における消費税額等の金額が明らかな場合には、次の文書についてはその消費税額等の金額は記載金額に含めないこととされてます。
    イ 第1号文書(売買契約書など)
    ロ 第2号文書(工事請負契約書など)
    ハ 第17号文書(領収書)

印紙税を納めなかったとき

印紙税の納付は、通常、作成した課税文書に所定の額面の収入印紙をはり付け、印章又は署名で消印することによって行います。
この印紙をはり付ける方法によって印紙税を納付することとなる課税文書の作成者が、その納付すべき印紙税を課税文書の作成の時までに納付しなかった場合には、その納付しなかった印紙税の額とその2倍に相当する金額との合計額、すなわち当初に納付すべき印紙税の額の3倍に相当する過怠税が徴収されることになります。ただし、調査を受ける前に、自主的に不納付を申し出たときは1.1倍に軽減されます。また、「はり付けた」印紙を所定の方法によって消印しなかった場合には、消印されていない印紙の額面に相当する金額の過怠税が徴収されることになります。なお、過怠税は、その全額が法人税の損金や所得税の必要経費には算入されませんのでご注意ください。




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